【NIKO−CHANさん】知的障害者福祉法と同い年64歳になるきょうだいです

 私の体験談のプロローグとして、まずきょうだいを紹介します。無邪気な笑顔がチャーミングなので、ここではNIKO-CHANさんと呼ぶことといたします。アイキャッチ画像に使っているイラストは「ふっくらして、笑っていてめがねをかけたおばさん」とキーワードを入れて、AIで自動生成したものの中から似た雰囲気のものを選びました。便利な時代になったものです。

 彼女は1960年生まれで、今年もう64歳。愛の手帳3度の知的障害がありますが、その原因はよくわからないようです。てんかん、右半身に軽いマヒがあり。でも、歩けるし、身の回りのことはたいてい自分でできるので手間はかかりません。入院したりすると、看護師さんには「4歳児に話しかけるように話してください」とお伝えしています。知的レベルはそんなものかなと思うのですが、感情面ではそれなりに成熟していて、もっとややこしくて複雑な話も理解できているのではないかと思うことがあり、そんな時は、いつもニコニコしてかわいがられるようにしているのも彼女なりのサバイバル戦略なのではないかとふと思ったりもします。

 今は、東京の実家から2時間ほど離れたA県B市のグループホームで暮らしています。実家を出たのが、今から16年前で本人は40代後半、母は80代の前半でした。父の認知症が出始めていた頃で、「このまま2人が死んじゃったら、NIKO-CHANさんはひとりぼっちになる。私も困る」と渋る両親の背中を押したのを覚えています。仕事や子育てに追われて、実家を顧みることはほとんどありませんでしたが、この間に、父が逝き、姉と仲のよかった弟も鬼籍に入り、99歳になった母と64歳の姉の面倒を一人で引き受けざるえない状況となっています。

 母と姉の密着ぶりはすさまじく、一緒に旅行に行った時に、母に少しでも休んでもらおうと姉の面倒をみようとすると、「私から盗る気なの」といわんばかりに怒りだすような状況でしたが、50代半ばでNIKO-CHANさんがんになった時に「お手上げ」となり、母の衰えとともに少しずつ私がかかわることが増えてきました。

 手術・抗がん剤治療を経て癌は大事なく終わったのですが、この数年は、転倒骨折、誤嚥性肺炎、コロナ入院に続くフレイル、さらに骨折と立て続けに事件がおき、対応に追われてきました。脳の器質的な問題で一般より老化が早いこともあるのでしょうが、生活習慣にも課題があるように感じています。

 NIKO-CHANさんを取り巻く福祉関係者の方と話していると、「なんでこんな遠くに預けるの。かわいそうじゃない」という冷たい視線を感じます。東京では知的障害者が暮らせるグループホームは今も足りなくて、高齢の親御さんと同居している知的障害者が今も多くいます。突然親がなくなってしまうと、ショートステイを転々とし、入所施設の空きを待ちます。都がお金をはらって地方につくった施設は、「都外施設」といい、北海道や東北にもあります。姉の時には、養護学校(当時の名称)の先生とおやが長野県につくった入所施設と、親族のつてで探した今のグループホームとで悩んだそうですが、個室にバストイレ付きという抜群の住環境にもひかれ今のグループホームを選んだようです。実家の次に行く場所の選択肢がないという問題はずっと解決しておらず、遠くにやりから冷たいわけではないことをご理解ください。家族としては、移った先の地域に根付き、楽しく自分の人生を過ごすことを願っています。

当時はグループホームもまだ珍しく、母の選択は「先進的」です。もしあのとき母が選んだのが、入所施設だったら今の私の苦労はないかもしれませんが、この「先進的」な選択のおかげで、私たちはグループホームで暮らす障害者は老後をどう迎えるのかという問題の矢面にたっています。

NIKO-CHANさんが生まれた1960年は知的障害者福祉法の前身の精神薄弱者福祉法が制定された年にあたり先頭に立って道を切り開いていかざるを得ない世代なのでしょう。幼い頃は、NIKO-CHANさんの世話を押しつけられてばかりでいつもプンプンしていましたが、両親はその何倍も大変な思いをしてきたと今なら思えます。本当にお疲れ様でした。

私は専門分野の記者として、介護・福祉政策を長く取材し、この20年の間に多くの新しい政策が世の中に送り出される現場をみてきました。志は高くても、現実との折り合いの悪く頓挫した事業や制度も山ほどありますが、ちょっとずつは前進したんじゃないかしら。思いのほか長く続けたのも、きっと姉のことがあったからなのでしょうね。

 私自身の人生も棚卸し期にあたり、決算として、知っていること、見たこと聞いたこと、感じたことブログにして発信してみることといたしました。自分をネタにすることは長く禁じていましたが、家族の大病の時には、経験者のブログに本当に助けられ、私の経験もどなたかのお役に立つことができれという気持ちからです。今は昔に比べて、支援の手段も増えましたが、情報過多で本当に必要なことが何かかえってわかりにくく、無駄な心配をしたり、お金を使ったりしているように感じます。こんな話でもどなたかのお役に立てれば幸いです。よろしくお願いいたします。

 

昭和の3人きょうだい。奥がNIKO-CHANさんです。この頃はシュッとしていますね。
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この記事を書いた人

9060.jp管理人。母99歳、姉63歳で9060問題に明るく直面中。介護保険制度に日本一詳しかった元記者。中低山一人ハイキングにドハマリ中。https://kawanas.net

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